気づくきっかけ

ランニングはブームから文化になった。と、何かの記事に書いてあった。

 

ブームの火付け役となった2007年の東京マラソンは倍率は3.1倍だったが、12回目を迎えた東京マラソン2019の倍率は12倍を超えた。皇居ではランナーを見ない日はないし、周辺のランステ(ランナーのためにロッカーとシャワーを貸す施設)はアフターファイブのサラリーマンでごったがえしている。

 

小学生の頃、1年で一番嫌いなイベントはマラソン大会だった。特にスタート前の緊張感が大嫌いで、朝ご飯を戻してしまった事もあった。走る事が嫌いだった。恐らく多くの人が嫌いだろう。わざわざ陸上部(長距離)に入部する人は相当な物好きか、他のスポーツができない冴えないヤツだろ。と、とある友人が言っていた。

 

未だに走る人の気持ちが分からないと言う人は多いと思うが、それでもランニングはこの国で市民権を得た。現在皇居乾門付近では歩道の拡幅工事が行われている。皇居ランナーに対する苦情が多いとはよく聞いていたけど、千代田区と東京都はランナーを規制するわけでも、もちろん苦情を無視するわけでもなく、なんと車道を削った。ランニング文化が道路形態をも変えてしまった。

 

ランニング人口が増えた要因としてお洒落なランニングウェアがデザインされ世に出たことが大きいと思う。それをメディアが大きく取り上げて、ブームはさらに加速した。初心者にとって、やっててかっこいい(少なくともみてくれが)ということは最重要事項であり、ダサいことはあまり流行らない。昔はランニングは前者だったけど、お洒落アイテムのおかげで後者になった。美ジョガーなんて言葉も生まれたし、実際にそれらしい人を見たことがある。

 

見てくれやイメージに心動かされランニングを始めた人は、中々継続できずにやめてしまう人が多いらしい。でも中には走ることの本当の楽しさに気づきいて継続できた人もいる。そういう人は、陸上部(長距離)にわざわざ入る人の気持ちが分からないとは多分言わない。デザインは人を動かし、気づく由もなかったことに気づくきっかけを与えてくれる。